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ハナビラタケは、ハナビラタケ科に属する白いハボタン状の大型のキノコです。世界に1科1属2種の存在が確認され、日本では1種だけが知られています。北海道から関東地方の亜高山地帯に分布し、夏から秋にかけてマツやモミなどの切り株や枯幹の根元に発生します。
ハナビラ状に波打ったその形と色の華麗さは目を見張るものがあり、以前から登山者に珍重されていました。また中国や韓国では見つかりにくく、「幻のキノコ」と呼ばれています。
ハナビラタケは他種のキノコに比べて数倍もの多量のβ-(1→3)-D-グルカンが含まれていることが確認されています。
亜高山帯に自生する天然のハナビラタケ
分析試験項目
アガリクス
マイタケ
●水分
8.8g
5.4g
5.9g
●たんぱく質
6.9g
31.4g
34.7g
●脂質
0.8g
3.0g
3.4g
●繊維
6.3g
5.0g
14.3g
●灰分
3.1g
7.7g
7.2g
●糖質
74.1g
47.5g
34.5g
●β-グルカン
そのほとんどのβ-グルカンは、
注目のβ-(1→3)-D-グルカンで構成
抗ガン効果があるといわれているβ-グルカンは、多くのキノコに含まれている成分ですが、キノコの種類によって含有量、そしてβ-グルカンの結合様式が違っています。ハナビラタケには、β-グルカンの中でも注目されているβ-(1→3)-D-グルカンが他のキノコに比べて数倍もの量が含まれていることが分析結果から明らかになりました。これだけのβ-(1→3)-D-グルカンを含有しているキノコは、今日までハナビラタケ以外には発見されていません。
マウスのガンを100%抑えたハナビラタケ
ガンに対して、自己免疫力を高めて治療する試みは以前から行われてきました。またキノコのβ-グルカンには、抗腫瘍作用があることは20世紀半ばには知られていましたが、近年そのβ-グルカンの中でもβ-(1→3)-D-グルカンに抗腫瘍作用があることが確認されました。中でもハナビラタケは、β-グルカンが61.9g/100g*という圧倒的な量を含有し、そのβ-グルカンのほとんどがβ-(1→3)-D-グルカンとして存在しているため、キノコの抗腫瘍作用の研究試料に選びました。(*財団法人日本食品分析センターによる分析値、酵素法による)
我々のマウスを用いた抗ガン活性の実験では、1群10匹、13群合計130匹のマウスに固ガン細胞サルコーマ180を鼠蹊部に皮下注射で移植しました。実験結果はすべてのマウスにおいて著しい抗ガン効果を示し、とくに熱アルカリ抽出画分100μg投与群では100%のガン退縮を見ました。
「免疫力を高め、そして抗ガン効果を得る」ということをテーマにハナビラタケと、そのβ-(1→3)-D-グルカンの研究を我々研究グループは、これからも続けていく所存です。
東京薬科大学名誉教授・薬学博士
宿前 利郎
(プロフィール)
1934年 東京都生まれ。
東京薬科大学薬学部卒業。
同大学同学部講師、助教授を経て1982年より2000年3月まで教授を務める。
注1./窒素・たんぱく質換算係数:6.25
注2./計算式:数字100−(水分+たん
ぱく質+脂質+繊維+灰分)
注3./サイアミン塩酸塩として
(財団法人日本食品分析センターによる)
分析試験項目
結果
検出限界 注
分析方法
水分
8.8g /100g
常圧加熱乾燥法
たんぱく質
6.9g /100g
1
ケルダール法
脂質
0.8g /100g
酸分解法
繊維
6.3g /100g
ヘンネベルグストーマン改良法
灰分
3.1g /100g
直接灰化法
糖質
74.1g /100g
2
鉄
2.28mg /100g
o-フェナントロリン吸光光度法
カルシウム
24.7mg /100g
過マンガン酸カリウム容量法
サイアミン
(ビタミンB1)1.04mg /100g
3
高速液体クロマトグラフ法
リボフラミン
(ビタミンB2)1.63mg /100g
高速液体クロマトグラフ法
ビタミンD
3,200IU /100g
高速液体クロマトグラフ法
β-グルカン
61.9g /100g
酵素法
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